日本学術振興会:科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(帰国発展研究)
研究期間 : 2020年05月 -2023年03月
代表者 : 西宗 裕史
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動神経細胞が選択的に変性し、運動機能が損なわれ、患者が呼吸不全に陥る疾患であるが、その病因またはALS神経筋接合部の脱神経機序は未解明である。本研究計画では、申請者が明らかにしたシナプス小胞放出部位を組織化する分子機序(Nishimune H, et al. Nature, 432, 580, 2004)に基づき、ALS神経筋接合部の脱神経機序の解明を試みる。先述の分子機序とヒト臍帯由来間葉系幹細胞を組み合わせ、ALSモデル動物の神経筋接合部の脱神経とALS疾病症状を緩和できた予備実験結果は、他ALS研究者が取り組んでいない独自手法である。本研究計画の目的は、ALS神経筋接合部でシナプス分化因子ラミニンβ2が減少する機序と、ヒト間葉系幹細胞がALSモデルマウスの症状を緩和する機序の解明にある。
当該年度においては、ALS神経筋接合部でシナプス分化因子ラミニンβ2が減少する機序の解析として、運動神経終末の電位依存性カルシウムチャネルを超解像STED顕微鏡で解析し、その発現量が減少していることを見出した。 複数ドーナー由来のヒト間葉系幹細胞を用い刺激条件と通常条件で培養し、分泌蛋白質をウェスタンブロットやELISAで検証した。殆ど細胞においてラミニンβ2と神経栄養因子群の分泌が非常に高くそして再現性良く上昇するが、その分泌レベルには細胞間で差異があることを見出した。