尿エクソソームを利用した尿路感染症診断法の開発と感染メカニズムの解明
日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2018年04月 -2020年03月
代表者 : 水谷 晃輔; 藤田 泰典; 堀江 憲吾; 仲野 正博; 伊藤 雅史; 川上 恭司郎
本研究の目的は尿路感染症における尿エクソソームのマーカーとしての有用性や生体反応の解明手段としての有用性の検証である。本年度に実施した研究では以下の成果を得た。
尿路感染症において細菌や細胞外毒素であるLipopolysaccharide(LPS)と直接反応する尿路上皮細胞と単球系細胞のモデルとしてそれぞれSV-HUC-1とTHP-1を使用し、大腸菌とLPSとの共培養を行い、細胞から分泌されるエクソソーム内で増加するシグナル因子(protein kinase B:Akt、Extracellular Signal-regulated Kinase:ERK)と転写因子(nuclear factor-kappa B:NF-kB)を見出した。さらにこれらの発現はLPSよりも大腸菌との共培養で顕著であることを確認した。ついで、実際にこれらの因子のヒト尿中エクソソーム内での発現を検討するために、密度勾配遠心法を用いて尿路感染症患者の尿から精製したエクソソームの解析をおこなったところ、これらの因子がエクソソーム内にあることが確認できた。その中で発現量からAktの測定が最も信頼性が高いと考え、尿路感染症の治療前後で尿中エクソソーム内におけるAktの発現比較を行ったところ、治療後にその発現が低下することが確認でき、尿路感染症のマーカーになり得る可能性を見出した。この結果を元に、尿エクソソーム内のAktの発現が無症候性細菌尿と尿路感染症患者における診断マーカーになりうるかを検討するため、immuno-capture法を用いて尿エクソソームを単離し、AktとエクソソームマーカーであるCD9の発現を検討したところ、尿路感染患者においてはそれらの発現が有意に上昇しており、無症候性細菌尿との鑑別のためのマーカーになる可能性を見出した。