日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2020年04月 -2024年03月
代表者 : 光武 誠吾; 土屋 瑠見子; 石崎 達郎
入院時から再入院予防のための移行期ケアプログラムが必要な集団を特定するため、東京都健康長寿医療センターを退院した高齢患者を対象に、認知症の重症度と再入院との関連を検討した。
65歳以上の入退院患者(8,897名)を追跡した結果、238名(2.7%)が退院後90日以内に回避可能な原因で再入院していた。多重ロジスティック回帰分析にて性別・年齢、併存疾患、在院日数などを調整しても、回避可能な再入院の発生リスクは、認知症でない者に比べると、認知症が中等度な者では1.4倍、重度者では2.2倍高いことが分かった。認知症が中等度以上の者は、入院時から再入院予防のターゲットになり得る。本研究成果は米国・Alzheimer’s Associationが刊行する学術雑誌「Alzheimer’s & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring」に掲載された。
また、簡易に入院患者の認知症重症度を把握するため、DASC-21(地域包括ケアシステムのための認知症アセスメントシート)とDASC-8から算出される重症度の一致度を検討した。入院時のDASC‐21データ(65歳以上19,775名)を解析すると、DASC-8のカテゴリーI(認知機能正常/手段的・基本的ADL自立)に当てはまる者の99%は、DASC-21で『認知症の可能性なし』に該当し、カテゴリーIII(中等度の認知症/手段的・基本的ADL低下)に当てはまる者の87%は『中等度・重度認知症』に該当した。一方、カテゴリーII(軽度認知障害~軽度認知症/手段的ADL自立・低下)に当てはまる者の39%はDASC-21の『軽度認知症』に該当したが、46%は『認知症の可能性なし』に該当した。DASC-21とDASC-8の重症度分類は目的によって使い分けが必要であることを示した。