日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
Date (from‐to) : 2022/04 -2025/03
Author : 井上 律子
加齢に伴う歩行変化は、転倒リスク上昇との関連が示唆され、高齢者の要介護の要因となる危険性が高い重要な老化現象である。ヒトやげっ歯類では、老化初期に相当する中年期から、加齢に伴う歩行変化が生じることが報告されている。この歩行変化による歩行機能低下のメカニズムを明らかにし、機能改善のための介入法を確立する上で、動物実験は有効だと考えられる。またエネルギー代謝に関わるミトコンドリア補酵素・コエンザイムQ10は、各臓器において加齢に伴い減少することが知られている。これまでコエンザイムQ10投与による脳ミトコンドリア機能の改善を介して、中年マウスで低下する一部の運動機能と皮質運動野の神経活動が回復する機序を明らかにしてきた。よって本研究では「老化初期の脳ミトコンドリア機能の改善は、加齢に伴う歩行機能低下も改善する」という仮説を立てた。
老化初期に相当する中年動物の歩行変化の研究は多くはなく、加齢の影響を受けやすい歩行指標の検討が十分に行われているとは言い難い。2023年度は、自発的な歩行における加齢変化を自然歩行解析システム(CatWalk XT)により計測し、中年および高齢マウスにおいてどの歩行指標が変化するか、さらに水溶化CoQ10投与により歩行機能が改善するかを検証した。