日本学術振興会:科学研究費助成事業 特定領域研究(C)
研究期間 : 2001年 -2001年
代表者 : 太田 成男; 大澤 郁朗; 金森 崇; 麻生 定光
ミトコンドリアゲノムは核ゲノムとは空間的に独立して存在しており、その挙動は多くの疾患において重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。糖尿病全体の1%におよぶ患者にはmtDNAの変異が蓄積していることがすでに報告されている。しかし、この変異が糖尿病にどのように影響を及ぼすのかは不明である。糖尿病患者と健常人において、ヘテロプラズミー変異の比率の相関関係を定量的に検討し、糖尿病とmtDNAのヘテロプラズミー変異の因果関係を明らかにし、糖尿病の危険因子となりうることを証明するのが本研究の目的である。
(1)糖尿病の原因のミトコンドリアtRNAの点変異によって、アンチコドンの塩基修飾が変化して、mRNAへの親和力が低下し、蛋白合成が正常に行われなくなることを明らかにした。この結果は、わずかな量の変異mtDNAでも不完全が蛋白を合成することによって細胞に影響を及ぼす可能性を示した。
(2)mtDNAのヘテロプラズミー変異の検出法を確立した。この方法の確立によって、ヘテロプラズミー変異を定量的に検討することが可能になった。
糖尿病患者の血液細胞において、体細胞変異が健常人よりも4倍多いことを明らかにした。さらに、多変量解析により、糖尿病の羅患期間に依存してmtDNAの塩基番号3243変異が増加することを明らかにした。
ミトコンドリアtRNA遺伝子変異によって生じるミトコンドリア機能低下の分子機構は多くの研究室で研究されているが、当研究室がはじめて分子機構を明らかにした。mtDNAのヘテロプラズミー変異と糖尿病の関連については多数の報告があるが、微量なヘテロプラズミー変異の定量についての研究はなく、定量的解析は当研究がリードしている。