日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2020年04月 -2023年03月
代表者 : 平野 浩彦; 山本 敏之; 岩崎 正則; 有阪 直哉; 本川 佳子; 枝広 あや子
昨年度構築した地域在住高齢者(東京都板橋区、群馬県草津町)のデータベースを基に、性別ごとに、各年齢階層においてパーセンタイル値の算出に必要な10名以上が存在する65~85歳の合計1364名(板橋730名(男性285名、女性445名、平均72.8歳)、草津634名(男性268名、女性366名、平均74.6歳))を解析対象とした。解析の結果、各項目において以下の特徴が認められた。①歯数は、75~85歳前後で中央値が基準値(20歯)を下回る、②グミ咀嚼による咀嚼機能は、年齢とともに高値と低値の差が大きくなる傾向がみられる、③ガム咀嚼による混合能力は、高値と低値の差は大きく変化しない、④咬合力は、高値では性差が大きい、⑤口腔水分量は、年齢による低下傾向はほとんど見られない、⑥口腔運動巧緻性(オーラルディアドコキネシス/ta/)は、年齢とともに徐々に低下し、特に男性は80歳以降で中央値が基準値(6.0回/秒)を下回る、⑦舌圧は、年齢とともに緩やかに低下し、75~79歳頃に基準値(30kPa)を中央値が下回る。
以上の結果等を基に、高齢者の口腔機能および摂食嚥下機能の包括的評価システムイメージの検討を進めた。口腔衛生、口腔乾燥、歯数、咬合力、口腔運動巧緻性(オーラルディアドコキネシス/pa/, /ta/, /ka/)、舌圧、咀嚼機能、嚥下機能の計10項目を用いて評価を行い、特性に基づいた類型別のリスク把握を行えるようなシステムを案として作成した。評価結果より、①口腔機能・摂食嚥下機能評価を可視化、②口腔衛生、補綴、機能訓練等の歯科治療ニーズの把握、③今後予想されるリスク(低栄養、サルコペニア、フレイル、誤嚥性肺炎等)、④加齢変化から逸脱した機能低下からその背景可能性のある原因疾患の抽出等をフィードバックできることを想定している。