日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2017年04月 -2020年03月
代表者 : 北村 明彦; 横山 友里; 谷口 優; 清野 諭; 新開 省二; 天野 秀紀; 野藤 悠; 西 真理子
群馬県の一地域の高齢健診受診者約1,200人の平均8年(最大13年)の追跡研究により、フレイル及び他の危険因子が要介護発生、死亡のリスク上昇に及ぼす影響を検討した。フレイルは、①意図しない体重減少(半年以内に2~3kg)、②「自分が活気にあふれている」の質問に「いいえ」と回答、③外出が1日平均1回未満、④歩行速度が毎秒1m未満、⑤握力が男性26kg未満、女性18kg未満の5項目のうち、3項目以上該当をフレイル、1~2項目該当をフレイル予備群と判定した。
その結果、要介護発生のハザード比(その因子を有する群が有しない群に比べて、要介護が何倍発生しやすいかを表す指標)は、フレイル、フレイル予備群、認知機能低下、脳卒中既往が1.4~2.1倍と有意に高値を示した。一方、要介護発生の集団寄与危険度割合(その因子を取り除くことにより集団全体の要介護発生が何割減少するのかを表す指標)は、フレイル予備群が17%、フレイルが12%と最も高率であった。死亡についても同様であり、フレイル予備群が24%、フレイルが13%の寄与危険度割合を示した。すなわち、集団対策として、フレイル及びフレイル予備群に陥ることを防ぐことにより、約8年後までの要介護発生を約3割、死亡を約4割、それぞれ減らすことが可能となることが示唆された。さらに、年齢別に解析した結果からは、前期高齢期の方が後期高齢期よりも要介護発生や死亡に対するフレイルの影響度が大きいことが明らかになった。
以上の高齢者健診受診者を対象とした研究の結果より、フレイルを健診にて評価して、フレイルやフレイル予備群と判定された方に対して、フレイル状態の改善、及び要介護化の予防のための様々な働きかけを行うことは、高齢者の健康余命延伸に大いに貢献するものと考えられ、そうした取り組みは前期高齢期から開始した方がより効果的であることが示唆された。