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重本 和宏 (シゲモト カズヒロ)

  • シニアフェロ- 副所長
Last Updated :2025/04/14

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研究キーワード

  • サルコペニア、フレイル、筋萎縮、神経筋疾患、神経筋シナプス、代謝変換   

所属学協会

  • Society for Neuroscience   The ROYAL SOCIETY of MEDICINE   American Academy of Neurology   日本分子生物学会   日本神経免疫学会   日本神経科学会   日本老年医学会   日本神経学会   日本サルコペニア・フレイル学会   日本基礎老化学会   

研究活動情報

論文

MISC

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2020年04月 -2025年03月 
    代表者 : 堀田 晴美; 重本 和宏
     
    高齢者のサルコペニア(骨格筋萎縮)予防のために「口から食べる」重要性が指摘されている。しかし、その理由はよくわかっていない。嚥下を誘発する咽頭への機械的刺激が、自律神経を介して甲状腺からのホルモンの分泌を促進するという現象を、私たちは新たに見出した。本研究では、この成果を発展させ、口や喉からの情報が、自律神経を介して骨格筋の維持をもたらすとの仮説を確かめるための基礎研究をおこなう。本研究の成果は、高齢者のサルコペニアを予防する新しい方法の開発につながるものである。 昨年度の研究により、咽頭刺激によって筋交感神経活動が高まり、骨格筋血流に影響を与えることが明らかになった。そうなると、その筋交感神経の活動は、骨格筋のはたらき(つまり筋収縮)にどのような意味があるか、疑問が生じる。そこで今年度は、骨格筋収縮力に対する筋交感神経の役割を調べた。 一側下肢を固定し、アキレス腱を露出して張力計に接続し筋張力を測定した。下腿三頭筋を支配する脛骨神経を、埋め込み電極を使って電気刺激した。刺激には、太い運動神経(I群線維)のみを興奮させる弱い電流を用いた。間欠的に高頻度刺激を加えることで、歩行時のようなリズミカルな筋収縮を誘発した。骨格筋が収縮すると、収縮筋からの細い求心性神経(Ⅲ群・Ⅳ群線維)が興奮して、反射性に心血管系の交感神経が興奮することが古くから知られている。脛骨神経刺激により下腿三頭筋が収縮すると、その時反射性に下肢の筋交感神経も興奮すると推測される。下肢への交感神経の専用経路である腰部交感神経幹を切断して、その切断前後で坐骨神経刺激による前脛骨筋の収縮力を比較することで、交感活動の筋収縮力への関与を明らかにした。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2020年04月 -2025年03月 
    代表者 : 堀田 晴美; 西宗 裕史; 重本 和宏
     
    高齢者のサルコペニア(骨格筋萎縮)予防のために「口から食べる」重要性が指摘されている。しかし、その理由はよくわかっていない。嚥下を誘発する咽頭への機械的刺激が、自律神経を介して甲状腺からのホルモンの分泌を促進するという現象を、私たちは新たに見出した。本研究では、この成果を発展させ、口や喉からの情報が、自律神経を介して骨格筋の維持をもたらすとの仮説を確かめるための基礎研究をおこなう。本研究の成果は、高齢者のサルコペニアを予防する新しい方法の開発につながるものである。 昨年度までの研究で、ラット後肢の筋力の維持には、筋収縮をきっかけとした交感神経の反射性活動が寄与することを明らかにした。今年度は、筋収縮と交感神経の間のこのフィードバック機構が、老化によって低下する可能性を調べた。その結果、老化ラットでは筋力における交感神経の寄与の程度が、予想通り、若いラットよりも少なくなっていることがわかった。その一方で、老化ラットでは運動神経とは関係ない交感神経性の筋緊張がおこりやすくなっていることを見つけた。つまり、老化ラットの交感神経では、運動神経をサポートする働きが衰えるだけでなく、単独で筋緊張をおこすようになる。これらの変化は、老化による筋力低下と運動機能の低下の原因の一端を説明する。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2019年04月 -2022年03月 
    代表者 : 重本 和宏; 大村 卓也; 金 憲経; 森 秀一; 本橋 紀夫
     
    サルコペニアに伴う筋力および運動機能の低下の原因として、老化による筋の質的変化が予想されるが、未だ明確に病理学的に定義されていない。病理学的エビデンスを基にしたサルコペニアのメカニズムの解明は、科学的根拠に基づいた早期診断法及び評価法の開発に必要である。申請者が開発したMusColor TMマウスの老化マウスを使い、特徴的な筋線維タイプ変化を発見した。また、MusColor TM筋細胞株を樹立して新しい研究手法を確立した。本研究により、老化に伴う筋のミトコンドリアの形態変化と機能低下およびそのメカニズムの結果と合わせてサルコペニアの早期の質的変化についての病理学的に定義を提案した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2016年04月 -2019年03月 
    代表者 : 重本 和宏; 森 秀一; 本橋 紀夫
     
    サルコペニア・筋萎縮に至る過程で、一方向性の骨格筋線維タイプ変化(サルコペニア:速筋→遅筋)がおきる. 筋線維タイプ変化(代謝変換)とサルコペニア・筋萎縮の機構の因果関係を明らかにして、サルコペニア・筋萎縮の予防・治療法の開発に結びつけることを目標として研究を進めている. 各筋線維タイプは固有のエネルギー代謝特性を有しており, 本研究ではマウスの異なる代謝特性を有する4種類の筋線維タイプ全てが、異なる蛍光タンパクで生きたまま識別できるMusColorマウスを開発した. このMusColor技術を使い、筋線維タイプ変化(代謝変換)を誘導する生体内因子を発見してそのメカニズムの解明を行った.
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2015年04月 -2018年03月 
    代表者 : 周 赫英; 森 聖二郎; 重本 和宏; 新開 省二
     
    サルコペニア・フレイルの予後予測への臨床応用を目指して、神経筋シナプス活動を反映する新規バイオマーカーとして期待される血中分泌型分子Aの機能的意義を明らかにする研究を実施した。高齢者サンプルを用いた解析では、骨格筋量、筋力、骨密度、フレイル予後、脊椎骨折などの指標との相関関係が、年齢補正すると消失することが分かった。ところで、血中分泌型分子Aは運動介入で有意に増加し、日常身体活動量、歩数、最大酸素消費量と有意に正相関することが明らかとなった。以上の研究によって、血清分泌型分子Aは何らかの骨格筋機能を反映する指標となりうる可能性は示された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 若手研究(B)
    研究期間 : 2011年04月 -2016年03月 
    代表者 : 木村 百合香; 喜多村 健; 池園 哲郎; 重本 和宏; 沢辺 元司; 久保 幸穂; 小林 一女
     
    (1)レーザーマイクロダイゼクション(LMD)法のヒト側頭骨病理学的解析への導入:RNA熱処理を加えることで、ラセン靱帯におけるCOCH mRNA、外有毛細胞におけるSLC26A5 mRNAの部位別発現の同定に成功した(Kimura et al, Hearing research, 2013). (2)加齢性難聴とcochlin:加齢によるラセン靱帯におけるcochlin分布の変化の可能性が示唆された。(3)mtDNA変異の蝸牛外側壁へ与える影響:MELAS症例において、血管条におけるmtDNA3243変異率は低かったが、病理組織学的には血管条の萎縮は高度であった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
    研究期間 : 2013年04月 -2015年03月 
    代表者 : 重本 和宏; 久保 幸穂
     
    超高齢社会を迎えサルコペニア(加齢性筋肉減少症)は要介護の主要因となることから、その発症機序と早期予防・治療法の研究が求められている. 本研究では、筋萎縮に伴う骨格筋の代謝機能の変化のメカニズムを解明して、さらに代謝を調節することで画期的な予防・治療法を開発するための新技術を確立することに成功した.
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2012年04月 -2015年03月 
    代表者 : 重本 和宏; 森 秀一; 枝松 緑; 宮崎 剛; 越 勝男; 小西 哲郎; 久保 幸穂
     
    1.抗MuSK(muscle-specific kinase)抗体で発症する重症筋無力症(MG)は従来の治療法に対して難治性の症例が多く、急速に筋萎縮に至る症例もあり、発症機序が抗AChR抗体で発症するMGとは全く異なる. 本研究で、MuSK-MGの疾患モデルマウスに対してラパマイシンが有効であることを明らかにした. 2.本研究より、抗LRP4抗体でMGを発症するマウスモデルを作成することに成功した. LRP4は成体の神経筋シナプスの構造維持において必須の分子であり、LRP4の機能抑制が神経筋シナプスの変性を介して筋力低下を引き起こすことが証明された.
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究課題提案型)
    研究期間 : 2009年 -2011年 
    代表者 : 重本 和宏; 久保 幸穂; 宮崎 剛; 山田 茂
     
    運動神経細胞と筋の相互作用により相互が維持する機構がMuSKにより制御され,未知の逆行性シグナルにより運動神経終末の機能が制御されることを明らかにした.逆行性シグナルの同定を日的として、モデルマウスの萎縮筋の発現遺伝子データーベースを作成し運動神経細胞の初代培養を使い探索した.
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2009年 -2011年 
    代表者 : 重本 和宏; 小西 哲郎
     
    従来の治療法では難治性の抗MuSK抗体陽性の重症筋無力症は、患者の血清中に存在する自己抗体の大部分は補体活性化作用がないため、正確な発症機序が不明であった. MuSK-MGの発症機序を明らかにするため、自己抗体産生による疾患動物モデルを新たに作製することに成功してその病態を解明した.動物モデルは短期間で100%発症して病態の進行は再現性が高く、発症メカニズムに基づく有効な治療薬を見いだした.
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2006年 -2007年 
    代表者 : 重本 和宏; 植田 規史; 松田 正司
     
    重症筋無力症患者の約85%は神経筋接合部の筋肉側に存在するアセチルコリン受容体が抗体によって障害されるために発症することが約30年前に米国で明らかにされましたが、残りの15%の原因は未解明でした.私達は神経筋接合部の筋肉側に存在するMuSK(muscle specific kinase)に対する抗体で重症筋無力症が発症することを世界ではじめて明らかにしました(J.Clin.Invest.2006).またMuSK抗体値の検査システムを確立しました.宇多野病院で依頼病院からの依頼を受け無償で確定診断を行い最新診断技術の普及に貢献しています(Neurology2004, Neurology2005)。MuSK抗体値測定は治療効果や予後判定にも役立つことを報告しました(E.J.Neurology2007).大学病院からの依頼には無制約で検査協力を行い我が国の臨床研究に貢献しています.MuSK抗体陽性の重症筋無力症は重症例が多いこと、従来治療法に対する治療成績も報告しました(E.J.Neurology2007).さらにMuSK抗体検査システムの開発中に新しい自己抗原(アルカリフォスファターゼ)を発見しました(J Neurol Sciences 2007).アセチルコリン受容体抗体陽性患者の臨床的重症化の指標となる新しい検査法として期待されます.当該研究によりMuSK抗体重症筋無力症の革新的診断、治療法の開発基盤となる分子病態を明らかにして発症分子機序の新しいモデルを提唱しましたました(Ann.N.Y.Acad.Sci 2008, Act Myologica 2008).
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2004年 -2005年 
    代表者 : 重本 和宏; 樅木 勝巳; 松田 正司; 丸山 直記; 久保 幸穂
     
    抗アセチルコリンレセプター(AChR)抗体陰性(seronegative)重症筋無力症(MG)の発症原因はこれまで不明であった.このseronegativeの約40%のMG患者の血清中に、抗MuSK(muscle specifik kinase)自己抗体が存在することは、Hochらにより報告されたが抗MuSK自己抗体でMGが発症するかどうかについては全く不明であった。我々はこの抗MuSK自己抗体がMGの発症原因となることを、動物モデルを使って世界で初めて報告した(J.Clin.Invest. in press 2006).さらに加えてMuSKが神経筋シナプスの維持(動的平衡維持)に必須であり自己抗体はその機能を抑制することによりMG発症が発症することを明らかにした。抗MuSK抗体陽性の重症筋無力症は球麻痺(嚥下障害、校音障害)、呼吸障害および筋萎縮を伴う重症症例が多く予後不良の患者群の率も高い.我々の成果は重症筋無力症の新しい疾患概念を確立するとともに、この疾患の新しい診断法および治療法について研究する道を開いた。 我々は抗MuSK自己抗体の診断を正確にかつ迅速に行うために、神戸薬科大学の太田光煕教授と共同によりアッセイ系を確立した(Neurology,2005)。我が国独自で開発した方法なので他国の制約を受けることなく、正確な臨床診断に基づいた臨床研究を我が国で推進することを可能とした。我々は無償、無制約で診断を受け付けている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2002年 -2003年 
    代表者 : 重本 和宏; 丸山 直記; 久保 幸穂
     
    神経筋シナプス接合部の形成とその機能保持に、リセプター型タイロシンカイネース(RTK)であるmuscle specific kinase(MuSK)は重要な機能を果たしている。我々は、この機能とその異常による疾患について、これまで大きな成果をあげることができた。重症筋無力症(MG)は、シナプス接合部後膜のアセチルコリンリセプター(AChR)、さらにMuSKに対する自己抗体により、シナプスの機能不全を誘発して発症することが知られていた。我々はMuSK自己抗体の鋭敏な測定法を開発することにより、両方の自己抗体を有する患者が存在することを世界に先駆けて発見し報告した(Neurology.2004.in press)。さらに、リコンビナントMuSK細胞外ドメインを作成してウサギに免疫することにより、筋力低下など重症筋無力症様の症状を実験的に誘発することに成功した。したがってこのウサギのMuSKに対する自己抗体を精製して、MuSKの機能および重症筋無力症の分子病態について解析を行うことが可能となった。神経筋シナプス接合部では、運動神経終末から分泌されるヘパリン硫酸プロテオグリカンであるagrinによってMuSKが活性化されAChR凝集が誘導されるが、agrin非依存性の刺激によってもAChR凝集が誘導されることが知られていた。驚くべきことに、我々は上記の抗MuSK自己抗体が、agrin非依存性のAChR凝集も特異的に抑制することを発見した(論文投稿中)。さらにMG患者の抗MuSK抗体も、同様の活性を有することを発見した(論文投稿中)。我々の結果から、自己抗体によるMuSK機能異常によるAChR凝集阻害が,重症筋無力症の分子病態そのものであると考えられる。 今後、次のように研究を展開させる。すなわち、MuSKの機能をさらに解析するために、MuSK蛋白高次構造の解明を行っている。我々は、MuSK細胞外ドメイン蛋白の大量精製を確立した。そして、その結晶化のスクリーニングを進めている。またMuSKの機能をinvivoで明らかにすべくMuSK-LacZノックインマウスの作成解析を進めている。質量分析解析で明らかにしたMuSK関連シグナル伝達候補遺伝子の機能解析を行う。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 重点領域研究
    研究期間 : 1997年 -1997年 
    代表者 : 近藤 郁子; 重本 和宏
     
    パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)はアルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)に次いで頻度の高い中高齢者の神経難病である。原因は不明であるが、特定の遺伝性要因を持つ人々に、加齢とともに生活習慣を含む環境因子が作用して発病にいたる多因子疾患に位置づけられている。本研究では環境因子と遺伝性素因を明らかにするために、香川県の中核病院に通院中のPD患者とその地域の同年齢の健康者集団におけるPD発症候補遺伝子の解析を行った。 研究協力要請に際し、十分な同意を得て血液を採取しDNAを抽出した。候補遺伝子として、ADの発症促進因子とされるα-antichymotrypsinのDNA多型(A、T遺伝子型)を用いた。また、常染色体優性遺伝性PDの原因遺伝子として報告されたα-synuclein遺伝子の全エキソンのDNA変異を検索した。その結果、ADの発症因子とされるα-anti chymotrypsinのA型遺伝子の頻度はPD患者でも健常者に比べて有意に高く(P<0.05),A型遺伝子のホモ接合体はT型遺伝子のホモ接合体比べて焼く3.36倍、AとT型遺伝子型の保因者(ヘテロ接合体)に比べて2.18倍の相対発症危険率を示した。しかし、α-synuclein遺伝子の解析では、特発性PD患者には優性型PDにみられて遺伝子変異は同定されなかった。さらに、全部のエキソン部分のDNA変異解析では3つのDNA変異が同定されたが、健常者のも同じ頻度に検出される遺伝子多型であった。以上の結果、PDの発症にはADと共通の遺伝性素因の関わる機序が存在することが示唆された。また、優性遺伝性PDの原因は最も頻度の高い一般的な特発性PDの原因にはならないことが明らかになった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 一般研究(B)
    研究期間 : 1990年 -1991年 
    代表者 : 竹森 利忠; 徳久 剛史; 水口 純一郎; 大西 和夫; 木元 博史; 重本 和宏
     
    我々が単離した幼若B細胞特異的遺伝子の8HSー20は約730bpのイントロンを介在してleaderおよびexon1により構成され、exonl3'側約100bpの塩基配列はヒトおよびマウスVκ,VλのFRIII領域と30ー40%のhomologyを示す。またその全長はB細胞特異的VpreBー1遺伝子と約40%のhomologyを示した。cDNA塩基配列から予想されるアミノ酸配列から、8HSー20遺伝子はIg gene superfamilyに属することが示唆された。8HSー20遺伝子は前B細胞株および骨髄で顕著に約0.7Kbのサイズで発現し、また低レベルではあるが脾臓、IgM産生ハイブリド-マに同一サイズで発現されるものの他のB細胞株での発現は認められない。cDNA塩基配列により予想される8HSー20C末領域に対するウサギ抗血法を作製し免疫沈降を行なったところ、8HSー20遺伝子は分子量13.5,15.5KDa,PI4.7ー4.8および分子量14,16KDa PI4.1ー4.2の蛋白質をコ-ドすることが示唆され、さらにこれらの蛋白質は前B細胞μ鎖に結合することが示唆された。得られた抗体を用いPulse/chaseによる免疫沈降を行なうと、前B細胞株において8HSー20遺伝子産物はμ鎖産生直後に結合し、一方λ5,VpreBー1遺伝子産物はμ鎖産生後期に結合することが明らかにされ、この事は8HSー20遺伝子産物がμ鎖輸送初期に何らかの役割をはたすことを示唆した。また8HSー20遺伝子を組み込んだ2系統のトランスジェニックマウスを解析すると、約20匹中3匹のネズミ骨髄、脾臓においてCD45R陽性細胞数の減少が、15週令以上の10匹のネズミ中3匹にMacー1陽性細胞の著明な上昇が認められた。またILー7依存性in vitro B細胞産生の系において全例にCD45Rおよびμ鎖陽性細胞産生の遅延が認められ、8HSー20遺伝子産物の過剰発現によりB細胞μ鎖発現が抑制される可能性が示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 重点領域研究
    研究期間 : 1990年 -1990年 
    代表者 : 竹森 利忠; 谷山 忠義; 大西 和夫; 重本 和宏
     
    我々が単離したAbelsonマウス白血病ウイルス由来温度感受性変異株を用いたトランスフォ-メ-ションにより、胎児胸腺よりThyー1^ー/Scaー1^+/ILー2R^+の表現型を示す幼若造血細胞5,6,12,19,33,42を、またThyー1^+/Scaー1^+/ILー2R^+の表現型を示すクロ-ンC1、C10ー7を単離した。33,42はILー1の刺激により形態学的にマクロファ-ジへ、更に6,33,42は胎児胸腺組織培養により形態学的にマスト細胞へ分化した。19はマクロファ-ジのみに分化した。C1およびC10ー7はILー1の刺激によりマクロファ-ジへ分化し、アクセサリ-細胞を除去した T細胞の増殖をConAの存在下および非存在下で増殖を支持することが明かとなった。これらのクロ-ンにおける他の系への分化能をサイトカインあるいは造血支持細胞存在下での実験系で検討したが、リンパ球、白血球系への分化は認められなかった。一方分化前のC10ー7細胞表面抗原に対するモノクロナ-ル抗体3F7ーA1,3A9ーD1を作製し、抗原の性状およびこの抗原を発現する細胞の性状および動態を確認したところ、成熟組織ではBリンパ球系の細胞にこの抗原が選択的に発現され、また3F7ーA1抗原発現に関して、B細胞発生の過程で幼若B細胞は抗原陽性と陰性の2つの亜集団に分別されることが示唆された。一方胎生初期胸腺にはこれらの抗原を発現する細胞は高頻度に存在するものの、成熟胸腺では殆ど認められない。また数回の実験に関して特に胎児組織では、胎生につれて3F7ーA1抗原の発現が複雑に変動することが示唆され、今後更にその発現意義を詳細に検討する必要性が認められた。3F7ーA1および3A9ーD1抗原はそれぞれ50ー60kdおよび40kdの蛋白質分子を認識することが示唆されており、また各組織における発現様式により新しい造血細胞表面抗原であると考えられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 一般研究(B)
    研究期間 : 1988年 -1989年 
    代表者 : 竹森 利忠; 重本 和宏; 田川 雅敏
     
    Bリンパ球の分化は、造血幹細胞から最級的に免疫グロブリンH鎖(μ鎖)遺伝子再構成により決定されるBリンパ球への分化拘束、その結果産生されたμ鎖蛋白分子により誘導されるH鎖のallelic exclusionおよびL鎖遺伝子再構成に伴われるvirgin B細胞の産生、virgin B細胞の骨髄から抹消リンパ組織への移行と成熟B細胞の産生、の3つの段階に分割される。我々は、造血幹細胞からB系への分化拘束が誘導機序、μ鎖蛋白分子によるB細胞成熟誘導の伝達機構、を明らかにする目的で、1)人為的に分化誘導可能な幼若造血細胞株の確立、2)幼若B細胞におけるμ鎖発現様式の解析、3)幼若B細胞株に特異的に発現する遺伝子の単離およびその構造と機能の解析、を行った。この結果、種々の異なった表現型を示す幼若造血細胞株がAbelsonマウス白血病ウィルス由来の温度感受性ウィルスを感染した胎児胸腺より確立された。得られたクロ-ンB6-24は、in vivoでのIL-1の刺激により約80%の細胞がマクロファ-ジ系へ分化し、また予備実験で、胸腺内投与によりCD4、CD8、B220マ-カ-陽性細胞へと分化した。得られた計42クロ-ンを用い、種々の条件下においてB系への分化拘束機構を検討している。一方、我々が確立した人為的に分化誘導可能な幼若B細胞株を用いて、前B細胞に発現するμ鎖が、種々の蛋白分子と結合することを明らかにした。このμ鎖複合体は、通常のμK鎖を表現するvirgin B細胞にも発現されるが、感塾B細胞ではその発現が抑制される。このμ鎖複合体は細胞内刺激伝達系に関して通常μK鎖と異なる機能をもつことを明らかにした。我々は同一フロ-ンを用いて、幼若B特異的クロ-ン8HS-20、8HS-15、8HS-14を単離した。8HS-20は123のアミノ酸よりなる未知の蛋白分子をコ-ドし、この蛋白分子(約11Kd)は幼若およびvirgin B細胞μ鎖の一部と結合することが示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 がん特別研究
    研究期間 : 1988年 -1988年 
    代表者 : 竹森 利忠; 重本 和宏
     
    細胞がん化は、正常細胞における増殖・分化関連分子の遺伝子レベルにおける質的・量的な変動と、それに伴うシグナル伝達機構の脱制御により誘導されることが明らかになりつつある。しかしこのように脱制御されて核内へ伝達されるシグナルが、それに対応するどのような一連の遺伝子発現に、どのような影響をおよぼすかについては明らかでない。この問題の解決のための一つのアプローチとして、ウイルスがん遺伝子発現を契機に、その発現様式を変動させる細胞遺伝子の構造と機能を解析することは重要と思われる。我々は温度感受性Abelsonマウス白血病ウイルス感染幼若Bリンフォーマに分化を導入し、分化前後にその発現様式を変動させる遺伝子8HS-15.を単離した。この遺伝子発現は、B細胞以外の組織・細胞では3・5Kbの、B細胞では約1・8Kbのサイズのメッセージとして発現され、Bリンフォーマでの発現量は著明に増強する。この遺伝子の塩基配列に相当する配列はGen Bankのdata baseには存在しない。一方、同一のシステムを用いて幼若Bリンフォーマに特異的に発現する遺伝子8HS-20を単離した。この遺伝子は精巣で1・2Kb、T細胞および他の組織では1・0Kb、B細胞では0・7Kbのメッセージとして発現される。B細胞に特異的な0・7Kbのメッセージの発現量は幼若Bリンフォーマ株で、正常脾臓B細胞あるいは成熟B細胞株のそれと比較すると、30-40倍に増強している。得られた遺伝子クローン(0・4Kb)の塩基配列から、この遺伝子の塩基配列と同一なもの、あるいはhomologyの高い塩基配列を有する遺伝子はGen Bankのdata baseには認められなかった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 奨励研究(A)
    研究期間 : 1987年 -1987年 
    代表者 : 重本 和宏

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