超高齢・多死社会への新しいケア・アプローチ:地域包括ケアにおけるFBOの役割
Japan Society for the Promotion of Science:Grants-in-Aid for Scientific Research Challenging Research (Pioneering)
Date (from‐to) : 2018/06 -2023/03
Author : 小川 有閑; 岡村 毅; 林田 康順; 宇良 千秋; 新名 正弥; 高瀬 顕功
本年度は主に以下の研究を進めた。
①国内外の寺院・仏教者を中心に組織化されている福祉資源の事例を視察・調査し、協働に資する組織・制度要件を検討した。国内では、北陸地方での僧侶による高齢者福祉活動の視察調査を行なった。また、国外では、台湾での臨床宗教仏教師の制度について視察調査を行った。台湾では、「善終」という理想的な死の概念があり、善終のためのケアが宗教者に求められている。そのために、医療界と仏教界が協力をして、臨床宗教仏教師育成プログラムを作成し、専門の教育・訓練を受けた宗教者が育成されている。医療者、宗教者双方に聞き取り調査を行ない、台湾の精神風土に根差したスピリチュアルケアの構築(スピリチュアルケアの本土化)の背景・動機、その過程や将来像について知見を得た。国内の事例とともに、地域に根差した精神風土に適した医療・高齢者ケアの重要性を明らかにできたと言える。
②寺院での介護者カフェを推進する浄土宗総合研究所の「超高齢社会における浄土宗寺院の可能性」プロジェクトについて、カフェの立ち上げや実施状況の記録や聞き取り調査を行なった。東京都葛飾区、宮城県塩竈市、静岡県富士宮市等で開かれた寺院での介護者カフェに参加、さらに地域の社会福祉協議会への聞き取りなども実施した。
③西日本を中心に広く行われている月参りの風習に着目し、僧侶への聞き取り調査を行なった。僧侶が訪問する檀信徒宅の多くは、独居高齢者もしくは夫婦のみの高齢者であり、多世帯同居でも交流する家族は高齢者という結果であった。また、定期的な訪問の中で、高齢者の異変に気付くことや高齢者の話し相手としての役割を僧侶が感じることが多々あり、月参りが高齢者の見守り機能を有していることが明らかとなった。
④浄土宗の全国の組長に月参り、中陰参りの実施状況についてのアンケート調査を行ない、全国の実施状況を地図化し、可視化を行なった。