日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2023年04月 -2028年03月
代表者 : 小島 成実
地域在住高齢者における尿中エクオール濃度とフレイルとの関連を、「板橋健康長寿縦断研究」のコホートデータを用いて検討した、2024年の日本老年医学会大会にて発表予定での内容である。〈目的〉高齢者のフレイルは、生活の質低下などのリスクを高める。大豆イソフラボンの腸内代謝産物:エクオールはエストロゲンの機能を調節することで、その産生能が更年期以降の疾患予防や健康全般に関わるとされる。しかしエクオール産生能とフレイルとの関連についての研究が不足している。我々は高齢者のエクオール産生能の有無がフレイルに関連するかどうかを明らかにするために横断的分析を行った。〈方法〉2023年2月の板橋健康長寿縦断研究対象者につき、尿中エクオール濃度を測定した。尿中エクオールが1000nmol/L以上をエクオール産生者、未満を非産生者と分類し、主要な説明変数とした。J-CHS基準に基づき対象者を、「ロバスト」と「プレフレイルまたはフレイル」に分類し、これを従属変数とした。エクオール産生能とフレイルの関連を、性・年齢調整を伴う二項ロジスティック回帰で分析した。〈結果〉対象者651名の年齢範囲は70-85歳、男性58.2%であった。エクオール産生者は372名(57.1%)、非産生者が279名(42.9%)であった。また、ロバスト288名(44.2%)、フレイルまたはプレフレイルが363名(55.8%)であった。エクオール非産生者を参照として、産生者では、フレイルまたはプレフレイル該当のオッズ比が0.71 [95%信頼区間, 0.51, 0.97]と有意に低かった。〈結論〉地域在住高齢者のうちエクオール産生者ではフレイル有病率が低いことが示唆された。エクオール産生能はフレイル発生に予防的に作用している可能性がある。今後、性別ごとの解析、生活習慣要因等の交絡因子を制御した解析を実施予定である。